リラクゼーションに偏りつつあるリハビリテーションについて
医療費削減の名のもとに、リハビリテーションは、誰でもできるもの、もしくは自分でやる、自助、互助の考えがこの国に蔓延している。いや、蔓延させようと国がしている。
つまり、リハビリテーション専門職にリハビリさせれば、当然医療費がかかる。なので、医療費がいらないように、本来医療であるリハビリテーションをまずは、介護保険に移行し、看護師さんでもあんまマッサージ師さんでも誰でもいいから、安くやってくれる人やっておくれ~。ってことになっている。
今年の四月からは、この介護保険下の機能訓練指導員に「鍼灸師」も追加されることになった。
「鍼灸師」が機能訓練???
もともと「柔整師」や「あんまマッサージ師」が入っていたのも?ではあったのだが、ここに来て鍼灸師も追加である。
国が定めている(保険適応となる)各療術師の役割を書いてみよう。
「柔整師」・・・ケガや捻挫、いわゆる急性のけがを見る人たちである。
「あんまマッサージ師」・・・拘縮。(上がりにくくなった肩や足を柔らかくする人)
「鍼灸師」・・・肩や腰の痛みを取る人
脳梗塞後遺症や認知症により障害が残存した場合にその障害が診れる(改善できる)資格は一つもない。
何故なら、障害は「痛み」だけで成り立っているわけではないからである。痛みが取れても、障害は取れない。「拘縮」だけで成り立っているわけでもない。拘縮が改善するだけでは、障害は取れない。ましてや、生活期に当てはまる介護保険下において「ケガ人」は一人もいない。
しかし、医療費削減のために療術師の人たちにどうせ利用者は分かりゃしないんだから「リハビリ」ぽいことをやっておいてくださいな。ってことにして、医療費を削減するという狙いである。
また、今回「鍼灸師」が運動指導員に入った経緯として、国は、増えつつある、療養費区分の大きな削減に乗り出したい意向が見え見えである。
介護保険下(まるめ)に療養費区分の人たちを押し込めて、療養費区分を締め付ける。もちろん、各協会から文句が出るだろうが、「いやいや、介護保険の方で利権渡しているから」と言い逃れできるようにしているのである。
霞が関の考えそうなことである。
とまぁ、リハビリテーションは介護保険下においてはリハビリテーション専門職の手を離れ、療養費区分の人たちの縄張りになってしまったわけだ。
そこで、問題なのは利用者である。当然、残存した障害は取れない、ADLは低下していくことは明白である。
ここで勘違いして頂きたくないのは、柔整師やあんまマッサージ師、鍼灸師さんが悪い、腕がないなんてこととは言っていない。決して間違えないようにしていただきたい。
彼らは、その道のプロフェッショナルたちである。私はむしろ彼らをリスペクトしているぐらいだ。
それぞれ、ケガのプロ。拘縮のプロ。痛みのプロ。である。神級の凄い人たちが沢山おられる業界である。
しかし、介護保険の適応疾患における障害が取れるのか?と言われれば、??なのである。
商売が違いすぎる。と言っているだけなのである。
水族館のスタッフに、お前ら魚のことよく知っているだろうから明日から寿司でも握ってみろ!!
と言っているようなものである。
似て非なるものなのである。
もう一つ私が危惧しているのは、リハビリテーション治療のリラクゼーション化だ。
介護保険下にリハビリを持ってきた時点で、「民間」に結果的に医療を落とし込んだ形になる。
するとどういう現象が起きるのか?
当たり前だが、民間は儲けなければならない。企業は、利益を上げることが使命である。するとどうなるか。
利用者さんが望んだことしかしない。当然である。顧客のニーズを満たして、なんぼの企業である。
しかし、リハビリテーション治療は治療であるがゆえに、この民間の道理が当てはまらないのである。
リハビリテーション治療は、痛い、しんどい、面倒くさい、とにかく嫌なことしかしないのが治療の治療たるゆえんである。
しかし、民間でこれをやったらどうなるか?
単純明快。売り上げが下がるのである。
売り上げを上げるためには、顧客に気持ちよくなってもらわないといけない。つまり、「リハビリ」の名のもとに、リラクゼーション(慰安的手技・手法)が横行する。いや、今現在横行しまくっている。なので、通所介護(デイケア)では、機能訓練加算を取っているにもかかわらず、どんどんADLが下がっていっているのである。商売なのだから、しょうがない事である。客に嫌われては商売にはならない。お客様に迎合して、お客様の望むがままにするのが商売である。お客様が望むように気持ちのいいリラクゼーションを施して、何が悪いのだって話である。ただ、リラクゼーションを続けると寝たきりに拍車がかかるだけのことである。
ただそれだけ。
デイケアが悪いわけではない。民間にリハビリテーション治療を委託して、はたまた、自助、互助の名のもとに、今度はボランティアにリハビリをやってもらい、医療費を削減しようとしている国の方針がおかしいのである。
しかし、もうリハビリのリラクゼーション化を止めることはできないだろう。
ならば、寝たきり街道まっしぐらになるのを指を加えてみているしかないのか?
答えは否である。
では、どうすればよいのか。
それは、利用者(国民一人一人)自身がリハビリテーションプロデューサーになる必要がある。かといって、リハビリのやり方を勉強しろと言っているわけではない。
どの時期にどの療法士または、どこの病院のどのリハビリテーション治療が自分に必要なのかを見極める力が必要なのである。
そんなの分からないよ。お医者さんがちゃんとしてくれるんじゃないの?
と思われた方は、もう寝たきり街道に片足突っ込んでいることになります。
お医者さんは、刃物と毒の使い手です。刃物と毒でどうしようもないものは、なんともしてくれません。
リハビリテーションプロデュースは自分でやるしかないのです。腕のいい医者を見つけるより難しい作業ですよ。腕のいいリハビリテーションの療法士を見つけるのは。また、一人見つければいいってものでもない。リハビリテーション治療は、急性期、回復期、生活期から成り立っている。各期で自分に合った(自分の病気に合った)療法士を見つけ出し組み合わせていかなければならない。
ケアマネがそんなことはやってくれるんじゃないの?誰か詳しい人がやってくれるよきっと。
なんて、淡い期待をしていたら、残念な数十年を暮らすことになってしまいます。元気な今のうちから、リハビリテーション治療にはどんなのがあって、家の近所のどこそこの病院の療法士は何期の何の障害に強いのか?等々しっかり調べておく必要があるんですね。
(リハビリテーションコーディネーターと言うのを、各療法士協会がやっきになって作っているが、権限無し、加算無し、療法士の言うことを聞かなくてもペナルティー無し。無い無い尽くしで、いる意味なしの状態になっている。権限もない、別に言うこと聞かなくてもペナルティーもないようなことなんて誰も聞かない。今は絵に描いた餅状態である)
今のご時世、年行くのって本当に難しいですね。:水野晴郎風に(笑)